企業の設備投資において、「リース」は一般的な手法として広く認知されています。
しかし、特に省エネルギー設備の導入を検討する際、「ESCO(エスコ)事業」という選択肢があることをご存知でしょうか。
この二つは、初期投資を抑えて設備を導入できる点で似ていますが、その本質は全く異なります。
本記事では、エネルギーマネジメントの専門家が、リース契約とESCO事業の違いを7つの視点から徹底比較し、それぞれのメリット・デメリット、そしてどのような企業にどちらの手法が適しているのかを分かりやすく解説します。
自社のコスト削減と持続可能な経営を実現するために、最適な選択ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそもリース契約とは?仕組みを分かりやすく解説
まずは、多くの方に馴染みのある「リース契約」について、その基本的な仕組みと種類を再確認しておきましょう。
リース契約の基本的な仕組み
リース契約とは、企業(借手)が必要とする設備を、リース会社(貸手)が代わりに購入し、一定期間、月々定額の料金で貸し出すサービスです。
コピー機やPC、社用車から製造機械まで、幅広い物件がリースの対象となります。
企業は多額の初期投資をすることなく最新の設備を導入できるため、資金繰りの安定化やキャッシュフローの改善に繋がるメリットがあります。
ただし、契約期間中の解約は原則としてできず、リース料には物件価格に加えて金利や保険料、固定資産税、リース会社の利益などが含まれるため、総支払額は購入するよりも割高になるのが一般的です。
リース契約の主な種類:ファイナンス・リースとオペレーティング・リース
リース契約は、大きく分けて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類されます。
- ファイナンス・リース
- 特徴: 契約期間の中途解約が原則不可で、物件の購入代金と諸費用(金利、保険料など)のほぼ全額をリース料として支払う契約です。 「フルペイアウト」とも呼ばれます。
- 会計処理: 原則として、売買取引に準じた会計処理(オンバランス計上)が必要ですが、中小企業の場合は賃貸借処理が認められるケースもあります。
- 所有権: 契約終了後、所有権が利用者に移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」があります。
- オペレーティング・リース
- 特徴: リース期間満了時の物件の残存価値(残価)をあらかじめ設定し、物件価格から残価を差し引いた金額を基にリース料を算出します。 そのため、ファイナンス・リースに比べて月々のリース料を安く抑えられる傾向があります。
- 会計処理: 賃貸借取引として扱われ、支払うリース料を経費として計上します。
- 対象物件: 中古市場が確立されており、残価設定がしやすい建設機械や工作機械などが主な対象です。
ESCO(エスコ)事業とは?省エネ特化の包括的サービス
一方のESCO(Energy Service Company)事業は、省エネルギーに特化した包括的なサービスを提供するビジネスモデルです。
単に設備を貸し出すだけでなく、省エネ診断から設計・施工、運用・保守、効果の検証までを一貫して行い、その結果として得られる光熱水費の削減効果を保証する点に最大の特徴があります。
ESCO事業の基本的な仕組み:「成果報酬型」が最大の特徴
ESCO事業の最も特徴的な点は、省エネ改修によって実際に削減できた光熱水費の中から、ESCO事業者へのサービス料や設備投資費用を支払う「成果報酬型」の仕組みを採用していることです。
ESCO事業者は、省エネルギー診断、設計・施工、運転・維持管理、資金調達などにかかる全てのサービスを提供します。また、省エネルギー効果の保証を含む契約形態(パフォーマンス契約)をとることにより、自治体の利益の最大化を図ることができるという特徴を持ちます。
出典: 環境省「1.「ESCO事業の概要」」
この「パフォーマンス契約」により、導入企業は省エネ効果が出なかった場合のリスクを負うことなく、確実にコスト削減を実現できます。 万が一、契約で定めた削減額に達しなかった場合は、ESCO事業者がその差額を補填する義務を負います。
ESCO事業の契約形態:2つのセイビングス契約
ESCO事業の契約形態は、資金調達をどちらが行うかによって、主に2種類に分けられます。
- シェアード・セイビングス契約
- 資金調達: ESCO事業者が金融機関などから資金調達を行い、設備投資を実施します。
- 支払い: 導入企業は、削減できた光熱水費の中から、契約で定められた割合の金額をESCO事業者にサービス料として支払います。
- 特徴: 導入企業は初期投資が一切不要で、財務的なリスクを負うことなく省エネ対策を始められます。 自治体や資金調達が難しい企業に適しています。
- ギャランティード・セイビングス契約
- 資金調達: 導入企業自身が自己資金や融資によって資金調達を行います。
- 支払い: 導入企業は、ESCO事業者に対して省エネ効果の保証やコンサルティングに対するサービス料のみを支払います。
- 特徴: ESCO事業者が資金調達リスクを負わないため、サービス料が割安になる傾向があり、長期的に見ると総コストを抑えられる可能性があります。
【徹底比較】リース契約とESCO事業の7つの違い
ここまでそれぞれの仕組みを解説してきましたが、両者の違いをより明確にするために、7つの視点から比較してみましょう。
比較表で一目瞭然!リース vs ESCO
| 比較項目 | リース契約 | ESCO事業 |
|---|---|---|
| ① 目的と範囲 | 設備の「賃貸借」 | 省エネの「包括的サービス」と「成果保証」 |
| ② コストの考え方 | 定額の「リース料」 | 成果報酬型の「サービス料」 |
| ③ 効果の保証 | なし(設備の性能保証のみ) | あり(省エネ効果を保証) |
| ④ 初期投資 | 不要 | 不要(シェアード・セイビングス契約の場合) |
| ⑤ メンテナンス | 利用者負担が原則 | ESCO事業者が負担 |
| ⑥ 会計処理 | 売買処理 or 賃貸借処理 | 賃貸借処理(オフバランス)が基本 |
| ⑦ 契約期間 | 法定耐用年数に基づくことが多い | 5年~15年程度と比較的長い |
違い①:サービスの目的と範囲
- リース: 主な目的は「設備の賃貸借」です。 リース会社は利用者が希望する設備を提供しますが、その設備を使ってどれだけの効果が出るかについては関与しません。
- ESCO事業: 目的は「省エネルギー化によるコスト削減の実現」です。 設備の提供はあくまで手段の一つであり、診断から運用、効果検証まで、成果を出すためのあらゆるサービスを包括的に提供します。
違い②:コストの考え方と支払い方法
- リース: 支払うのは、物件価格や金利などから算出される月々定額の「リース料」です。省エネ効果の有無に関わらず、契約期間中は一定額を支払い続ける必要があります。
- ESCO事業: 支払うのは、実際に削減できた光熱水費を原資とする「サービス料」です。 成果が出なければ支払額も減る(または補填される)ため、コストと成果が連動します。
違い③:効果(成果)の保証の有無
これが両者の最も決定的な違いです。
- リース: リース会社が保証するのは、あくまで設備の「性能」であり、導入による「省エネ効果」や「コスト削減額」を保証するものではありません。
- ESCO事業: 「パフォーマンス契約」に基づき、契約で定めた省エネ効果(コスト削減額)を保証します。 目標未達の場合はESCO事業者が差額を補填するため、導入企業は安心して取り組むことができます。
違い④:初期投資と資金調達
- リース: 初期投資は不要です。資金調達はリース会社が行います。
- ESCO事業:
- シェアード・セイビングス契約: 初期投資は不要です。ESCO事業者が資金調達を行います。
- ギャランティード・セイビングス契約: 導入企業が資金調達を行う必要があります。
違い⑤:メンテナンスと管理の責任
- リース: 設備の保守・修繕義務は、原則として利用者(借手)にあります。
- ESCO事業: 契約期間中の設備のメンテナンスや適切な運用管理は、最大の効果を維持するためにESCO事業者の責任範囲に含まれます。
違い⑥:会計・税務上の処理
- リース: ファイナンス・リースは原則として資産計上(オンバランス)が必要ですが、中小企業会計指針の適用などにより賃貸借処理(オフバランス)が可能な場合もあります。 オペレーティング・リースは賃貸借処理です。
- ESCO事業: 設備の提供ではなく「役務(サービス)の提供」と見なされるため、基本的に賃貸借処理(オフバランス)となり、支払うサービス料を費用として計上できます。 これにより、貸借対照表(B/S)をスリムに保つことができます。
違い⑦:契約期間と終了後の選択肢
- リース: 法定耐用年数に応じて設定されることが多く、終了後は「返却」「再リース」「買取(買取オプション付きの場合)」などを選択します。
- ESCO事業: 投資回収期間を考慮して5年~15年程度の長期契約となることが一般的です。 契約終了後は、削減された光熱水費がすべて導入企業の利益となり、設備の所有権も企業側に移転(シェアード・セイビングス契約の場合)されるのが一般的です。
メリット・デメリットから見る最適な選択肢
リース契約とESCO事業、それぞれの特徴を理解した上で、自社にはどちらが適しているのかを判断しましょう。
リース契約が向いているケース
【メリット】
- 初期投資を抑えられる: 多額の購入資金を用意することなく、必要な設備をすぐに導入できます。
- コスト把握が容易: 月々の支払いが定額のため、経費管理や事業計画が立てやすくなります。
- 事務処理の簡素化: 購入に伴う固定資産税の申告や減価償却計算、保険手続きなどが不要になります。
- 陳腐化リスクの回避: 契約期間を耐用年数に合わせることで、常に最新の設備を利用できます。
【デメリット】
- 総支払額が割高になる: 金利や手数料が含まれるため、購入するより総コストは高くなります。
- 中途解約が原則不可: 契約期間中は設備が不要になっても解約できず、リース料を支払い続ける必要があります。
- 所有権がない: 自社の資産にはならず、自由に改造や処分はできません。
<こんな企業におすすめ>
- 省エネ設備に限らず、幅広い設備を初期投資なしで導入したい企業
- 自社で省エネ効果を試算・管理できるノウハウがある企業
- 設備の利用期間が比較的短く、常に最新機種を使いたい企業
- 減価償却などの複雑な経理処理を簡素化したい企業
ESCO事業が向いているケース
【メリット】
- 初期投資・リスクなしで省エネが実現できる: 特にシェアード・セイビングス契約では、資金負担も成果が出ないリスクもありません。
- 省エネ効果が保証される: パフォーマンス契約により、確実にコスト削減が実現できます。
- ワンストップで任せられる: 専門家による診断から運用・保守まで一括して委託できるため、専門知識や人員が不要です。
- 環境経営(CSR)への貢献: CO2排出量削減など、企業の環境への取り組みをアピールできます。
【デメリット】
- 契約期間が長期にわたる: 投資回収のため、5年以上の長期契約が基本となります。
- ESCO事業者の選定が重要: 事業者の技術力や提案内容によって成果が大きく左右されるため、慎重な選定が必要です。
- 削減メリットの一部は手数料となる: 削減できた光熱水費のすべてが自社の利益になるわけではありません。
<こんな企業におすすめ>
- 大規模な工場やビルなど、エネルギー使用量が多く、大きな削減ポテンシャルがある企業
- 省エネに取り組みたいが、何から手をつけていいか分からない、専門部署がない企業
- 初期投資や効果が出ないリスクを避けたい企業
- 老朽化した設備の更新を、コスト削減と同時に実現したい企業
実際にESCO事業を手掛ける企業は数多くありますが、例えば省エネ設備の導入実績が豊富なエスコシステムズのような専門企業の取り組みを参考にしてみるのも良いでしょう。
こうした企業の事例を見ることで、自社に導入した際の具体的なイメージが掴みやすくなります。
エスコシステムズのSNSでは、実際の施工事例や省エネに関する情報が発信されています。
導入前に知っておきたい!補助金活用と注意点
省エネ設備の導入は、国や自治体の補助金制度を活用することで、さらに負担を軽減できる可能性があります。
省エネ設備投資で活用できる補助金制度
2025年現在、企業が活用できる代表的な省エネ関連の補助金には以下のようなものがあります。
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金: 経済産業省が管轄する代表的な補助金で、「先進的な省エネ設備」や「指定された汎用設備(空調、ボイラー、LED照明など)」の導入を支援します。
- 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業: 専門家による省エネ診断の費用を補助する制度などがあります。
- 各自治体の補助金制度: 東京都や神奈川県、千葉県など、各自治体が独自に省エネ設備の導入支援や脱炭素化に向けた補助金・助成金制度を設けています。
これらの補助金は、ESCO事業やリースを利用する場合でも対象となる可能性があります。
ただし、公募期間が短かったり、要件が複雑だったりする場合が多いため、ESCO事業者やリース会社、専門のコンサルティング会社に相談しながら進めることをお勧めします。
契約前に確認すべき重要なチェックポイント
どちらの手法を選ぶにせよ、契約前には以下の点を必ず確認しましょう。
- 料金体系の透明性: リース料やサービス料に何が含まれているのか(金利、保険、メンテナンス費用など)を詳細に確認する。
- 効果測定(M&V)の方法(ESCOの場合): 省エネ効果をどのように計測・検証するのか、その基準が明確かつ客観的であるかを確認する。
- 中途解約の条件: 万が一の場合の解約条件や違約金について事前に把握しておく。
- 契約終了後の取り扱い: 設備の所有権や再リース料、撤去費用などがどうなるかを確認する。
- 事業者の実績と信頼性: 同様の規模や業種の導入実績が豊富か、経営基盤は安定しているかなどを確認する。
まとめ:自社の課題解決に繋がる最適な手法を選ぼう
「リース契約」と「ESCO事業」は、どちらも初期投資を抑えて設備を導入できる有効な手段ですが、その目的と仕組みは大きく異なります。
- リース契約: 設備の「賃貸借」であり、コストを平準化し、手軽に設備を利用したい場合に適しています。
- ESCO事業: 省エネ効果を保証する「包括的なサービス」であり、リスクなく確実にエネルギーコストを削減したい場合に最適です。
自社の目的は何か、省エネに関する専門知識や人員はいるか、どの程度のリスクを許容できるか、といった点を総合的に判断し、最適な手法を選択することが、企業の持続的な成長とコスト削減の鍵となります。
本記事が、その判断の一助となれば幸いです。
最終更新日 2025年12月17日





